ぽつりのぽブログ

闇の中にあふれる光

映画「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」を観た。

自分の絵の才能に絶対の自信を持っているが、功名心は皆無。そんな老人画家ニキフォルは、物乞いをしながら絵を描き続ける。結核を患い、世間から煙たがらても、老体にむち打って命ある限り日々を黙々と生きる。

一方、役所で働き家庭もある画家のマリアンは、端から見れば幸せな生活を送っている。しかし一人の画家として、安定した生活に満足できない部分がある。そんなマリアンのアトリエにニキフォルが図々しく居着いて次々と絵を描き、奔放に才能を発揮する。

苦難の中で人間の醜悪さを嫌というほど見てきたニキフォルの絵に、不思議と悲壮感はない。淡い色彩からは、むしろ人間の優しさを感じる。子供のような純粋さがある。カラフルで、いびつで、だけど調和した美しさ。良寛の書や河井寛次郎の作品に通じる精神の自由がある。これ以上失うものはなく、誰に媚びることもなく、矛盾を抱えずまっすぐに生きているからこそ到達できる境地なのかもしれない。

ニキフォルが生涯に描いた絵は4万作。信じがたい数字だけど、寡黙なニキフォルにとって、絵は言葉を話すよりもずっと簡単なことだったのだろう。

By poturi | 08年05月24日(土) | コメント(0) | トラックバック(0)

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