siyaca
makotoのことを悪く言う人はいません。みんなが親切にしてくれます。でもsiyacaと一緒にいるときのmakotoは、どういうわけか手のひらを返したようにみんなから冷たくされます。いつもは頼んでもいないのにおまけしてくれる八百屋さんが、野菜を売ってくれません。ただ道を歩いているだけなのにお巡りさんに注意されます。そういうとき、決まってsiyacaはうつむいて「ごめんなさい」と言います。
siyacaは、makotoがいないとなにもできません。でもmakotoと一緒にいると、どうしてもmakotoを困らせたり傷つけたりしてしまうので、siyacaは自分のことが大嫌いです。毎晩泣いているので、siyacaの目はいつも腫れています。
ある日、makotoはsiyacaに聞きました。
「どうしていつも悲しい顔をしているの?」
siyacaはうつむいたまま言いました。
「わたし、嘘つきだから」
siyacaはそのまま押し黙ってしまいました。makotoは、そんなsiyacaが好きでした。siyacaのことをもっと知りたいと思いました。makotoは嘘つきの意味を知らなかったので辞書を引きました。辞書には結局知らない言葉が並んでいるだけで意味はわかりません。
makotoは誰からも愛されています。決して人を疑わないからです。ちょっとした疑念が頭をよぎることはありますが、それ以上のことは考えません。考えようとするとどうしようもなく眠たくなってしまうのです。
嘘っていったいなんだろう。嘘について考えると眠たくて仕方がありません。それでもmakotoは来る日も来る日も、眠気と戦いながら嘘について考えました。眠くなると珈琲を飲んで、無精ひげを撫でながら考えました。悩むほどに煙草の量も増えていきました。makotoは日に日にやつれていきます。みんなが心配してmakotoに言います。「今のままでいいんだよ」。「知らなくていいこともあるんだよ」。makotoは納得できませんでした。みんなは僕になにか隠し事をしている。疎外感を感じながら、根気強く嘘について考えました。次から次へと新しい概念にぶつかり、そのたびに珈琲を飲んで、煙草を吸いました。
苦しい日々を乗り越えてようやく嘘を理解したとき、髭で覆われたmakotoの顔にはsiyacaと同じ憂いが宿っていました。嘘と自分は光と影で、嘘のおかげで自分が存在していたことに気づいたのです。今までの自分が愚かで恥ずかしく思いました。
makotoはとっておきの嘘をプレゼントすると言ってsiyacaを夕暮れの砂浜に呼び出しました。そして、まことしやかに言いました。
「君なんていなければいいのに」
siyacaは「嘘が下手ね」と言って初めて笑いました。
By poturi | 09年04月22日(水) | コメント(0) | トラックバック(0)この記事のトラックバックURL
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